豊岡の暮らしを支える、市役所の仕事。
中村 壮志さん 仲田 怜奈さん
豊岡市役所
こんにちは。飛んでるローカル豊岡で市民ライターをしている田中里佳です。福井県出身。大学卒業後、約3年の会社員生活を経て”自分の働き方と暮らしを見直したい”思いから転職を決意。縁あって豊岡に移住してまいりました。2024年1月より、「地域コミュニティ組織の伴走支援」をテーマに、地域おこし協力隊として活動しています。
今回取材に伺ったのは、豊岡市役所。豊岡市は2005年の市町合併から今年で20年を迎え、コウノトリの野生復帰をはじめ四季折々の豊かな自然と共生するまちづくりを進めてきました。市役所は変化し続けるまちと向き合い、日々の暮らしから観光政策まで多岐にわたる分野で豊岡の暮らしを支えています。

入庁7年目のお二人にお話を伺いました!

中村 壮志(なかむら そうし)さん
2019年4月入庁、28歳。香美町出身。入庁後は水道課に配属され、2024年10月より観光政策課で勤務している。
休日の過ごし方:家族で但馬の自然が満喫できる観光スポットへ。エメラルドグリーンの海が広がる竹野浜で、なにもしないでぼーっとする時間がお気に入り。

仲田 怜奈(なかた れな)さん
2019年4月入庁、28歳。豊岡市竹野町出身。入庁後は会計課に配属され、2023年4月より市民部税務課に勤務している。
休日の過ごし方:友人とご飯に行ったりドライブをしたりして過ごすことが多い。但東の「たんとうチューリップまつり」や出石の「お城まつり」など、季節のイベントにもよく出かけアクティブに楽しんでいる。
志したのは、”公務員として働くこと”
- 中村
- 親が地元で公務員として働いていたこともあり、自分が働く姿を想像した時に”市町の職員さん”というのが身近な存在でイメージしやすかったです。大学4年で就職活動が落ち着きいくつか内定もいただいていた頃に、家族から「但馬だったらまだ市役所職員の応募が間に合うから受けてみたら?」と提案がありました。受けてみたところ合格をいただき、家族に報告したら他社の内定を伝えた時以上に喜んでくれて。「それなら市役所職員になろうかな」と思い、結果的にUターン就職を決めました。
- 仲田
- 私は大学進学の時には「教員になろうかな」と考えていたので教職課程を履修していました。なんとなく「公務員がいいな」という気持ちもあったので、学びを活かせそうな中高の社会科を選んだんです。ただ、実際のところあまり身が入らなくて(笑)。在学中は市町の職員になることは考えていなかったのですが、教員試験に落ちてしまった後に市役所の試験があって。親から「受けてみたら?」と言われて受けたのが豊岡市役所でした。
- 中村
- なんでしょう……”面白そう”ですかね(笑)。結果的には公務員になることを選びましたが、就職活動をしていた当時は自分が経験したことない業種を選んで挑戦していました。
- 仲田
- 漠然としたイメージですが、”安定しているところがいいな”という思いはなんとなくありました。もし民間企業に就職すると営業の仕事もあるかもしれないと思うと、自分は人と話すのがあまり得意ではないので事務のほうが向いているだろうなと当時は考えていました。
- 中村
- 都会での生活はあまり視野に入れていなかったですね。高校までずっと但馬にいてその後は島根県の大学に進学したので大きく環境が変わるという経験があまりなく、自然と「地方で暮らすことが自分に合っているのかな」と感じていました。
- 仲田
- (都市部で暮らすのは)考えなかったですね。自分は結構のんびりしているので、「都会のせっかちな雰囲気は自分に合わないかな」と勝手に思っていました。”都会は遊びに行く場所”というような感じで、自分が住むイメージは湧かなかったです。
入庁後の歩み

- 観光政策課では、演劇祭や玄武洞公園でのイベントなどの準備から当日の運営までを一貫して担当しています。イベントを“やって終わり”ではなく、その後どういう効果があったかを考えることが大事ですね。周囲にどのような影響があったのか、観光客の方がほかにどのような場所を訪れたのかなど、次の施策につながる手応えがあると嬉しくなります。

- 仲田
- 税務課では固定資産税に関する業務を担当しています。固定資産のうち宅地や畑など土地にかかる税額を決定する仕事です。主に市役所の窓口で市民の方々の対応を行っていますが、実際に現地を確認しに行くこともあります。

- 中村
- コロナ禍の勤務ですね。自分たちが入庁した年の冬に市役所でもコロナ禍対応が始まり、ちょうど上司に教えてもらいながら仕事を覚えていく時期と重なったんです。その時は上司に聞いても経験がないことばかりで、これまでみたいに"聞いて教えてもらう"だけでは通用しなくて。一気に環境が変わったことで”自分も何か考えなきゃいけない”と気持ちが引き締まったのをよく覚えています。
- 仲田
- そんなに大した話ではないのですが、入庁1年目の時に電話に出たら一言目から怒鳴られて。でも私は何の話かさっぱり分からなくて、後で聞いたら別の部署にかけられた電話がそのまま転送されてきたようでした。電話の相手に何を聞いても答えてもらえなくて、どうしていいか分からずその場で泣いてしまって。それでしばらく電話がトラウマになりましたね…。でも、今振り返ると経験を積むうちに少しずつ鍛えられたなと感じています。
それぞれの視点から見つめる、市民の暮らし

中村さんが所属する観光政策課と、仲田さんが所属する税務課。それぞれの職場の雰囲気を伺うと、市役所という組織がもつ多面性が見えてきました。
中村さんの職場である観光政策課は、どちらかといえば“わいわいとした雰囲気”。豊岡の観光施策を形にするために職員同士はもちろん、外部の関係者とも密にコミュニケーションを取っています。「観光は生活に最低限必要なものではないけれど、正解がないなかで“どうすれば暮らしがより良くなるか”を考えている」と中村さん。観光を通してまちの魅力を高めるとともに人の暮らしに彩りをもたらしています。
一方で仲田さんの所属する税務課は、”落ち着いた雰囲気”。市民の暮らしに関わるお金の手続きなどを通して、安心して日々を過ごせるよう支えています。「同年代の職員も多く、良い雰囲気のなかで分からないことがあれば話し合いながら仕事を進めている」と仲田さんは話します。
部署ごとに仕事の性質も市民との関わり方もさまざま。それは“人の暮らしをどんな視点で支えるか”のちがいであり、それぞれの視点から同じ暮らしを見つめ、支えています。
これからのまち、これからの自分

- 中村
- 観光政策課に来てから人との交流やつながりが増えてきました。今後ほかの部署に異動したとしても、これまでの出会いや人とのつながりを大切にしていきたいです。仕事の内容が変わっても、これまで出会った人たちとまたちがう形で一緒に仕事ができる気がしています。
- 仲田
- 私は中村さんと比べると業務が局所的なやりとりになることが多いですが、窓口では市民の方と直接お話しする機会も多くあります。その際には相手のお話を丁寧に聞いて、困りごとを解消して納得して帰ってもらえるよう日々心がけています。これからもその姿勢を大切にしていきたいですね。
- 中村
- 大学進学や就職のタイミングで但馬を離れる人は多いと思いますが、もしかすると“但馬はこういうところ”というイメージが子どもの頃から自分の中に定着しているのかもしれません。でも、一度外に出てしばらくしてから戻ってくると同じ地元でも子どもの頃には気づけなかった新しい発見があるのがUターンの魅力だと思っています。”何もない”と最初から決めつけずに、”もしかしたら新しい発見があるかも”とワクワクしながらUターンを考えてみるのもいいんじゃないでしょうか。
- 仲田
- 業務のなかで外に土地を見に行くことも多いのですが、Uターンで帰ってきているからこそある程度の土地勘があって、その土地の雰囲気もなんとなく分かります。自分が知っている場所なら少し肩の力を抜いて仕事ができるかもしれませんね。…抜けすぎたらだめなんですけど(笑)。そんなふうに思います。
【インタビューを終えて】

何より、いつもお世話になっています。もしかすると、誰もがお世話になる部門は限定的でまだ知らない市役所の仕事がたくさんあるのかもしれません。しかし、それらの仕事はすべて人の暮らしをつくるうえで欠かせないもの。直接的ではなくても、何らかの形できっと私たちの生活に届いています。特に中村さんは生活の“攻め”の部分を、仲田さんは“守り”を支えています。それぞれの部署で視点は異なっても、どちらも同じ暮らしを支える大切な役割を果たしているのだとインタビューを通して実感しました。それぞれの場所で仕事に向き合うお二人のご活躍を陰ながら応援しています。もし困ったことがあったら窓口で相談させてください!
撮影:トモカネアヤカ

































